黄昏
綿屑の様な雲は
墨を流した様な
煙突の煙は
だんだん薄くなりながら
西から東へ流れていく
電線に止っていた雀は
泥礫の様に見えながら
とんでいった
屋根の
豆の手との間に
蜘蛛はさかさになって
囲を踏んまえている
太陽がめり込んでいった
くらがりのかけらが
とんでいる
だんだん濃くなっていく
やみに包まれた私の
瞼にはっきりと
故郷の山川は生れた
窓
白バラの群のような雲は
見ているうちに
崩ずれてゆく
煙突の煙は
西から東へ
ゆるやかに流れてゆく
からすが一羽
煙突の煙の反対の方へとんでゆく
蕾のふくらんだ桜に
雀が二三羽止っている
窓は私の詩集である
あかい星がかがやいている
青い星がきらめいている
大きな星の隣に
小さな星がまたたいている
雨の降る穴だろうか
星は皆濡れている様に見える
山の端にあった円い月が
何時の間にか
黄(金)を失って
松の梢にかかっている
窓は私の詩集である