庭桜すでに一葉をとどめざる木の間に見ゆる冬潮の色
「お母さん僕を忘ないで下さい」と書く童の手紙見つつかなしゑ
はればれとマスクはづして物を言ふ看護婦とゐて親しさのあり
健かにあるやと訪ね来る人のわれになけれど生きてありたし
小見山もわれも不自由になりにけり小脇にショベル用ひつつ思ふ
指なき己が双手を膝にして人を恋ふにはせつなかる夜や
旅人の思ひを乗せてゆく船か春ぬばたまの霧に濡れつつ
渡されたる選挙用紙が有難きものの如くに
苦しくはなきやとたづねやる毎に衰へし掌を合せゐし妻
亡き父母のみもとにゆくを喜びて死を待つ妻と夜明したり
Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在67才、農業歴31年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
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