赤沢さんの短歌は雄大、そして壮大。個人的な問題(事情)を超越している。
赤沢さんの短歌を中学校の国語の教科書に載せてほしい。万葉集の代わりに。
人が立ちて歩き始めしときよりの背後の不安われもひきずる
夜の雨の船の汽笛がふくらみて鳴りひびきをり出口なきごと
嬉嬉として青葉は風に吹かれをり美しかりき日のなきわれに
咽喉のかぎり声張り餌を求めあふつばめの雛の声日日太る
五月闇ふかき眠りと無縁にて自らの夜を啼く
生きてゐるいまを自在に鳴く虫を鳴かせて闇の草原やさし
雨の昼の床下に鳴く
風ひとつなき秋空よ山肌の柿は色づきせかされてゐる
灯の下に妻が皮剥く富有柿の色つやめきて脳裏に溢るる