苦しかった晩
昼間はなんでもない私の病気も、夜になるときまっていたくなるのだった。
あたりも暗くなり、雨戸をしめきった部屋の中で火鉢のそばに坐って新聞を見ていた私に、寮母さんが声をかけた「節っちゃんいたいかい、注射頼んでやるか」と言われた。
私は「いいよ」と、なにげなく答えた。
その時はそれで終わってしまった。
私は早ねをしようと思い、火鉢をはなれ、床をしき、ねることにした。
床に入ったが、いたみは増すばかり、じっとしていられないので、あっちに動いたりして、いたみをまぎらわした。
しかし痛みはなおらなかった。━━こんなことをして時間をすごした。
ラジオはとまり、皆んなねたらしく、電気は消え、さびしい程静まりかえっていた。
私はいたみと一人残されたようなさびしさで泣きたい気持でいっぱいだった。
私はただ、いたいいたいに気をとられ、ねむることも出来ず朝のくるのをまつばかりだった。ようやく朝がたになると、私は、いつの間にかうとうととねむりについていた。
多摩全生園 中三 森 節子さん
森 節子さんの略歴
1938年7月9日静岡県に生まれる。1951年3月12日多摩全生園に入所。