やすらい
麗らかな日が
憩うている私の足を
撫でてくれる
暖めてくれる
峨々たる峯を攀じ
底しれぬ谷を辿り
風雨の暴力に耐え
果しない吹雪の広野を
越えてきた
足を
七十余年の労れ
萎えはてて
盲杖にすがっていても
ひょろひょろと
よりどない歩み
その歩みから
人々に切れ凧を
連想させて
秘かにそう呼ばれている
足・・・・・・・
私はこの足で
あすも歩まねばならない
すべてを越えて行かねばならない
足跡には
鮮血が滲むだろう
だがその奥に法悦よ
耀やいてくれ
・・・・・・・・・
麗らかな日が
草に憩う
私の足を
撫でていてくれる
あすを励ましてくれている
山田法水さんの略歴
外島保養院に入院。日蓮宗の熱心な信者で、昭和二十年代前半まで光明園の日蓮宗立正会の役員を務める。詩のほかに短歌も発表。早くから視力を失ったが、文芸活動に専念した。風水害後、多摩全生園に委託。生没年、入所年は不詳。
(山田法水さんは藤本トシさんの最初の夫です)