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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

駿河療養所  鈴木才雄さん




甲虫の髭が夜学の顔に触る




革命歌秋刀魚の骨を味つけ焼く




天皇制廃止のビラに梅薫る




机を並べ汗の平和のレポを績む




蟹のあぶく遺骨収集船帰る




点もせば秋燈暗いというもの発見

(17年間の失明より解放され、物の形と光と闇の判別できる一句)




穴に入る蛇にどんより睨まれる




安保阻止厳冬の辻に人並ぶ



鈴木才雄さんの略歴
大正2年6月2日静岡県天龍市生れ。小学校就学当時から子守、水汲み、蚕室の火の番、牛のまぐさ切りに従事。貧農の苦衷を味わう。小学4年のとき太田雪窓という老人に俳句の才を見出され歳時記二冊をもらう。昭和14年名古屋市の軍需工場で知り合った広山に俳句を勧められ俳句結社で指導を受ける。昭和15年上海で狙撃された広山の名を継ぎ、鈴木は拝名を「広山茂」とする。ハンセン病に罹り駿河療養所へ。療養生活10年余で句作3000句余りに達し、昭和38年『鈴木才雄句集』(窓第5集)を出版。これを期に再び鈴木才雄に戻る。共産党員入党後の作品は、時事問題を扱った政治性の強い句作が主となる。



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駿河療養所  伊藤朋二郎さん(2)



万朶まんだ翌日は失くするくすり指
(手術一句)




病個室暮春の木椅子一つ空く




つばくらや患者犇めくプロミン科




黙々と黒勝つ囲碁や夏旺ん




薔薇紅し八・一五の朝に切る




癩園に夏帽誰も輝やかす




蝉の声眼痛を刺し誕生日




秋の金魚玩具の如し弱視なり




百坪の焼跡となり春の雪
(2月9日、正午出火、30分にて全焼す。一物をも出すことなく寮と共に灰となる。惜しむは書籍200冊余と句帖、日記なり(24年)




火蛾狂う戦争の名の人殺し
(朝鮮動乱、満一年に思う)




伊藤朋二郎さんの略歴
駿河療養所 『窓』作品集(昭和31年)『窓』第二集(昭和34年)に採録。


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駿河療養所  伊藤朋二郎さん(1)



肉親と会いたし月の秋なれば




切餅の厚さよ切に父を恋う




いきいきと練炭燃ゆる穴の底




有名無名なべて詩人よ糸ざくら




海苔焼けばいきなり亡母の恋しくなる




冬紅葉空の紺碧支え立つ




木々は裸
北條民雄いまはなし




人の身を包みて秋の始りぬ




凍港の如く灯して夜の医局




家と離る歳月熱き大根汁




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駿河療養所  二宮美穂さん



診察うくる吾子の傍に吾が立ちて罪人の如医師の語を待つ




夫の日記にA子と書きゐし女がわれ離り病めばいま妻となる




うすくなりし眉毛に引けと妹が今日はまゆずみ置きて帰りぬ




夫と子らを送り出したる朝の部屋にシャツのボタンを一つ拾ひぬ




別るるを泣かじと堪ふる吾子の手のこまかく震へ顔をそむけぬ




微熱する真昼の夢に見し夫の手はたくましく肌につたはる




息絶ゆる瞬間にいて我を呼びし「母よ何を言わんとしたの」




亡き母の老眼鏡を用いるにさながらにして合うがさびしき




わがために離婚となりし妹が吾娘を引取り世話してくれぬ




病む我を残して帰国せぬと言う吾子と争う夫を哀れむ




北鮮とはいかなる国ぞ命とも思う吾子らを連れゆくと言う



二宮美穂さんの略歴
『陸の中の島』(1956年)『苔龍胆』(昭和31年)『苔龍胆』第四集(昭和40年)


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駿河療養所  館 寿樹さん




入所決めし吾を駐車場まで送り来し夜の舗道に父が靴音




あざみの雨に打たれて咲く様を哀しと思ひ別れ来りき




噛みしめる粥に故なく涙流る今日優しく介助され居て




小包に添へて母の写真来ぬ盲ひし吾を未だ知らぬらし




指翳し今朝も視力を試し見る寂しき仕草と吾が思ひつつ




吾の癩告げられし日に死んで呉れといひたりし父の涙も悲し




不肖の吾うみしを責めて
くしけずる油断ちましし母を淋しむ




社会復帰の目処なき
ままに我のあり庭の朽木に冷雨しみゆく




何時の日か失せゆく眼思いおり萌ゆる芝生の陽のあたたかし




眼裏にともるうらら日いとしみつつそよぎの中を衿たててゆく




これよりは癩者が住めり道標夜気をうつしてひっそりと立つ


館 寿樹さんの略歴
大正11年生まれ。昭和34年駿河療養所入所。「アララギ」所属。短歌会代表を長く務める。白島玲子の夫。『苔龍胆』第五集(昭和48年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在67才、農業歴31年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp
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