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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

沖縄愛楽園  金城忠正さん



我故に苦労に明け暮れし母なりし写真さえも戦禍になくす





青空に咲き誇る
梯梧取らんとして母に叱られし頃のなつかし





つき初めの心にかかる探り杖つきゆくうちに思いほぐれる





戦時中苦労を分ちし友来る宮古名産の黒糖提げて





沖縄戦終えて三十年未だ尚我らおびやかす魔の不発弾





復帰すればよくなるものと思いしに最悪迎うる園の医師不足





点字毎日のテープに禿の歌があり我は頭をさすりつつ聞く





熊蝉の声もひそまる昼下り盲導鈴のみ威勢よく鳴る





連れ立ちて治療に通ふ杖の友それぞれの性音に出しつつ





病故に馴染のフォークも唇にあてて確む盲ひの我は





杖に頼る我の引越は何時も何時も病む療友らの善意に安らぐ





今日からは盲ひ同志の二人住ひ声かけ合ひて明るき部屋に





父います母もいませる里の墓四十四年墓参もいけず




金城忠正さんの略歴
明治44年生まれ。幼い頃父を失い母の手一つで育てられる。小学校卒業後発病。昭和18年半ば「強制収容」を遁れて沖縄愛楽園入園。昭和40年失明。昭和47年盲人会に入会。六十過ぎて先輩たちのすすめで「樹木」によって短歌を作るようになる。『地の上』(1980年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)

 
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沖縄愛楽園  安里秀男さん

 

開眼後初めて眺む十五夜の月光波にゆらぎて映る





月触の如何になるかと見つめつつ友らと浜に話のはずむ





つぐみの子をとらえし猫より取り返し可愛くなりて籠に飼いおり





干潮の潟一面にあおさ生え女らいそいそバケツさげゆく





療友の庭に植えたるパパイヤの実のすずなりに暫し見つむる





療友と話を終えて帰る時九官鳥我にバイバイと言う





立秋の節ともなれば二期作の田植えの頃の故郷偲ばる




安里秀男さんの略歴
沖縄県生まれ。昭和17年2月兵庫県長洲で日雇労働中に診断を受ける。兵役免除となったが、20年の神戸の大空襲で帰郷。鶏小屋の半分に匿われていたが、昭和22年11月乗ったくり舟を客船に引かせて沖縄愛楽園に入園。昭和48年には盲人会に入会したが、53年3月手術により視力回復。井藤道子らのすすめで作歌を始め52年には短歌会入会。『地の上』(1980年)


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沖縄愛楽園  平良一成さん



故郷に一人寂しく鶏を飼う妻は鶏肉を送りて呉れぬ





米軍に虫ばまれ行く思いして人も海をも汚染され行く





埋めおきし貝殻今日は取りいだし一つ一つをたんねんに磨く





戸袋に雀のひなのかえりおれば朝戸くるごとに心を配る





夏くれば母が織りたる芭蕉布を着けて涼しき頃のなつかし





癩故に幼く別れし吾子達のたつきを妻に聞きて安らぐ





古里に留守居を守る妻のために受けし年金分けて持ちゆく





盲い我が唇寄せて庭先に咲きいるというバラを嗅ぎたり





教会に傘さして行く盲い我ら方向違いと呼び戻されぬ





幸うすき我と思いしが七十路も生かされて今日は敬老の座に




平良一成さんの略歴
明治42年5月沖縄県山原生まれ。大宜味尋常高等小学校卒業、卒業後母校の用務員(小使い)となる。初任給9円。18歳の時東京の従兄弟の元で大工見習いとなるが、父が急病のため帰郷。死亡した父に代わって沖縄で大工として働く。徴兵検査は甲種合格、久留米十八連隊で短期現役。結婚して二女を得たが、13年召集、軍医の診断を受ける。18年家族と別れ沖縄愛楽園に入園。失明。昭和22年、橘丸で帰還してきた沖縄出身の療友に付き添ってきた井藤道子の指導で短歌を始める。「樹木」所属。『三つの門』(昭和45年)『地の上』(1980年)





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沖縄愛楽園  深山一夫さん(2)



六名定員のこの部屋に七人も入れられて何時までせまく苦しき生活なのか





義足傷に病み臥す我に知らさずに指の手術を受けたる妻よ





鶏を飼ひ石油焜炉を購ふ妻あればかにかく働かねばならぬ我





福祉年金獲得会つくりし我ら皆気の弱き顔して集る





手術のあと残りし鼻の傷幾度も鏡に写して妻は悲しむ





手術せし妻が浴びる水を炎天の井戸より両義足の我運びをり





朝より両義足の繃帯巻き替える仕草に疲れて昼を眠りぬ





身障者大会参加者の中我ら四人だけがハ氏病者なりき





我が暮し豊かにならず好きな煙草もやめなさいと妻に言はるる





深山一夫さんの略歴
大正10年沖縄県国頭郡生まれ。昭和13年沖縄愛楽園入園。「樹木」「アララギ」所属。『陸の中の島』(1956年)『蘇鉄の実』(1965年)『三つの門』(昭和45年)『地の上』(1980年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)
 



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沖縄愛楽園  深山一夫さん(1)



きしみ鳴る義足の吾に驚きし仔猫を見ればわびしかりけり





つはぶきの花咲き盛る丘隅にああ堕胎児の墓並びあり





仏桑華の花さえざえとして静まれりもの音絶えし夏の真昼間





芭蕉葉の下にうひうひしく咲きそめし月桃の花を暫し見て居り





両義足脱ぎて砂の上に足伸ばし現身を今は嘆かずなりぬ





午後の陽のやはらかく照る浜にゐて義足枕にしばしねころぶ





今宵また雨となるらむ全身の神経痛は針射すごとし





見下せば沈む破船に寄る波の静かなるかな秋の光りに





冬枯れし故郷の川の水澄みてさむざむ白き雲の浮かべり


 

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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在67才、農業歴31年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp
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