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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

菊池恵楓園  森 光丸さん(3)




療院を逃亡のがるる人は日を置かず落魄おちぶれはてて帰り来るなり




秋深く庭木に来鳴く法師蝉鳴きをはる間のこゑの寂しさ




育ちゆく子等を憚りて姉上のたより絶えたる心肯ふ




肉むらに日毎刺さるる注射の跡硬ばりたるがいささか痒き




世のつねにあらぬ病を持つからにはらからにさへ頼みすくなき
(はらからとは兄弟姉妹)




あはただしき行き来の人の音絶えて重病室に果つる友あり




世に起たむつひの望はむなしくてわれは盆栽を日日に培ふ




食物のほかに記憶のなきごとき今日のひと日もはかなくて経ぬ




川音をききつつ橋をひとつ越えて学校に行きしこと忘れ得ず




体臭のくさくなりつつ病み居れば五官といふも衰へをらむ





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菊池恵楓園  森 光丸さん(2)



 
痛かりし右の腕は持ち添へて柩に移しまゐらせにけり




故郷の老いらくの父を思ふとき我がいたつきのくやしかりけり




いまはしき病なるかも人皆の目につくほどを犯されにけり




くににせし遊びを此処にくりかへし育ちゆく児らを見ればかなしき




歌の友数馬と連れて来し野辺は
はぜの紅葉のうつくしきかも
(数馬とは、大島数馬さんで島田尺草さんのこと)




臥床に好む果実のかずかずを思ひてをれば腹のへりたる




席並めて朝餉に就ける病友の音たてて食ふあはれなるかな




うつし身に持てる病は伝はりし家系に
かつてありしことなき




奈良朝に悲田院施薬院を思ふにもかなしきものの世に絶ゆるなき




連立ちて歩む草野に視力弱き我はしばしばものに
つまず




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菊池恵楓園  森 光丸さん(1)

 

秋冷えのしるけき朝や丸丸と肥えたる芋の洗はれてあり




草深き田舎の村に豆を打つ調子揃ひて昼静かなり




逢ふたびに手紙来ずやと聞く我に笑顔してゆく文くばり人




六十路にて文字習ふとふ母そはの仮名書きの文見れば淋しも




稲作の今年はよしとちちのみの力こもりし文とどきけり




久久の姉の便りは長長と罫の外まで書き続けあり




昼ふけの庭に干したるさや豆の時折りはじく音のひそけさ




こしかたの話など聞き日の縁に翁と二人糸まきて居り




離り来し故郷恋ひつ母恋ひつ泣く子ほとほとすかしあぐみぬ




すこやけき人は仕事に就くならむ汽笛寂しく聞く朝かな






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菊池恵楓園  畑野むめさん(5)



いのち迫る日の如今日のさびしくて夫に背中を向けて語らず






朝の窓立ちて開け放つこれだけの楽しみ今はおろそかならず




残飯を干せば雀が集り来るかかるはかなさも親しわが部屋




雨の中に夫の柩の見えずなり傘さして誰か吾を支へつ




ながく生きて怒りも湧かず追はれたる日は遠くして茶の花親し




岩波書店広辞苑送り給ひたり虫眼鏡代五百円添へて




曲りたる手は人中に隠しをり無菌となりて久しきものを




す枯れたる草踏み分けて遂に来ぬ亡き母の墓標未だ新し




振り返り見むひまもなき古里の山川を背に病む身のさびしさ




命断ちし君を羨しと思はねば吾は堪へて待つおのづからの時





畑野むめさんの略歴
明治43年5月20日熊本県球磨川の上流の貧しい家に7人の弟妹の長女に生まれる。17歳ごろ発病。昭和6年22歳のとき九州療養所入所。昭和7年結婚。昭和11年森光丸を知り作歌を始める。昭和12年土屋文明の来園を機に13年「アララギ」入会。18年夫死亡。20年再婚。『菴羅樹』(昭和26年)『陸の中の島』(1956年)『海雪』昭和35年『畑野むめ歌集』(昭和37年)『三つの門』(昭和45年)『檜影集』(昭和51年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)

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菊池恵楓園  畑野むめさん(4)



「あなたは誰ですか」十五年会はざりし妹に言ひし




枯草に坐りやすらふ目の前の境界壕を越えて吹く風







水ぶくれとなるまで知らざりし足の火傷夫が嗤えば吾も笑ひぬ




冬を越す我が家の中に十姉妹蛾蝿蜘蛛らわれと日を浴む




たれよりも母が嫌ひしわが病五十まで生きてその母こひし




雲のかたち変りてゆくを見つつ居て何にあくがるる飯食ひながら




わが母は生きていますよ年賀状母の名にして来たるを見れば




両の手を水に浸してもの洗ふこのひとときを待ちし歳月




風落ちし空にしづけき三日月の光より遠き人かわが母




右の手の動かずなりしを君に言へば左にて書けとこともなく言へり





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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在67才、農業歴31年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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