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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

大島青松園  塔 和子さん(5)

 

不出考


枯れている芝生

珊瑚樹がしんから赤い実をつけて

ぼけの花がぽっかり咲いている

陽がうらうらと照り

小鳥がときおり鳴く

すべてが


一枚の画の中におさまった色彩のように

互いに互いをひき立て合った朝

私も

この中の一景として加えられ

出来上がった画の中を

いま出て行こうとしている

しかし

本当は朝昼夕べ

自然の画く豊かな色彩の中にいつでもはめ込まれていて

どこへも

出て行くことは出来ないのだ










崖の上


遊んでいてもぎりぎり

いつも切り立つ崖の上

怠惰の淵へ落ちるか

悲哀のふちへ落ちるか

思考するのもぎりぎり

危うく踏みこらえて

青白く光る一瞬に命をたくすか

ときたま平らなところにいると不安で

すぐに

先端へ走り寄る

端にいないとなにも出来ない不具の身

不具である私の

私が私であることによってふるえる

この快感

この充実感

ぴいんと張った内側の

一本の線によって生き

その他のところは

死んでいる



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大島青松園  塔 和子さん(4)


妖精


春の土は

すべての生の胎動を秘めてやさしくぬれている

このぬれた土の上で

草が生えたそれはもう枯れることをまぬがれない

動物が生まれる

それは死がひとつふえたことだ

生まれない前

死はなかった

生まれたところから

死を生きることによって生き

いつか死だけになる

春の土の上で

はじまったものらの胎動をききながら

私はふと

生命の妖精のように

手を差し出している黒いかげを見る

そのかげと共に

すべての生は

ただひたすらに生きようと思いながら

死へと上昇するほかなく

上昇している











邪悪な鬼



悲しくて泣いているのに

そんなに弱くはないはずだ泣くなんて

と言っているところがあったり

嬉しくて泣いているのに

そればかしのことと思っていたり

はしゃいでいても

そんな自分をじろっと見ていたり

深刻に悩む自分にも

冷たい一瞥をなげてなやみの中へ

入ってゆこうとしなかったり

とにかく

どんな感情にも

どっぷりひたり切れない

邪悪な鬼が一匹いて

いつもどこかが

白々としている



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大島青松園  塔 和子さん(3)


行く

人も獣も

鳥も魚も

みんな行く

私も行かなきゃあと

ぼんやり思いながら立っている

どこへ

餌をさがしに

とどくとも思えない夢にとどくために

みんな必死に走っているのだ

まっさきに捕って腹を満たすために

目を輝かせて走っているのだ

私も行かなきゃあ

走っているもののすごい力に押されて

ゆらゆらしながらそう思う

なにか

ちょっと

それたところで

しらじらと立って










深い鏡


愛しまれていると思うとき

世界はまぶしく光る

慈しまれていると思うとき

ほんのりとして温かく

裏切られたと思うとき

ふき上げる怒りとさびしさに細くなる

私は

他人の顔の深い鏡に

つかれつかれてきりきりと痛みながら

いつも

声を上げそうになるのを

あやうくおさえている

鳥よりもなお

さびしい生きもの




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大島青松園  塔 和子さん(2)

 




私は沙漠にいたから

一滴の水の尊さがわかる

海の中を漂流していたから

つかんだ一片の木ぎれの重さがわかる

闇の間をさまよったから

かすかな灯の見えたときの喜びがわかる


過酷な師は

私をわかるものにするために

一刻も手をゆるめず

極限に立って一つを学ぶと

息つくひまもなく

また

新たなこころみへ投げ込んだ

いまも師は

大きな目をむき

まだまだおまえにわからせることは

行きつくところのない道のように

あるのだと

愛弟子である私から手をはなさない

そして

不思議な嫌悪と

親密さを感じるその顔を

近々とよせてくるのだ 












胸の泉に


かかわらなければ

この愛しさを知るすべはなかった

この親しさは湧かなかった

この大らかな依存の安らいは得られなかった

この甘い思いや

きびしい思いも知らなかった

人はかかわることからさまざまな思いを知る

子は親とかかわり

親は子とかかわることによって

恋も友情も

かかわることから始まって

かかわったが故に起こる

幸や不幸を

積み重ねて大きくなり

繰り返すことで磨かれ

そして人は

人の間で思いを削り思いをふくらませ

生を綴る

ああ

何億の人がいようとも

かかわらなければ路傍の人

私の胸の泉に

枯れ葉いちまいも

落としてはくれない




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大島青松園  塔 和子さん(1)

 
人の林で


花に蜜がなければ蜂も寄ってこない

海に魚がいなければ釣り糸をたれはしない

地下に水がなければ掘りはしない

   花も海も地面も

   あるがままにあって

   ゆったりとしている

関心がないものは見つめることさえしないが

その魅力を知る者は

どこからともなく寄って来て

貪婪に摂取する

ああ人の林で

意識することなく

蜜をもつ花になりたい

豊かに魚を住まわせている海になりたい

質のいい地下水を

たっぷりふくんでいる地面になりたい

作意もなく誇張もなく

見せかけもなく

花が花であることにおいて

海が海であることにおいて

地面が地面であることにおいて

おのずからもつ

魅力を

身のうちにもちたいのだ
 













それは

生き作りの鯛

ぴいんと

いせいよく尾鰭を上げて

祝いのテーブルの上で

悠然と在りながら

その身は

切られ

切られて

ぴくぴくと痛んでいる

人々は笑いさざめきながら

美しい手で

ひと切れ ひと切れ

それを口にはこんでいる

やがて

宴が終わるころ

すっかり身をそがれた鯛は

すべての痛みから

解放されて

ぎらりと光る目玉と

清々しい白い骨だけになり

人々の関心の外で

ほんとうに鯛であることの孤独を

生きはじめる





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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在66才、農業歴30年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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