あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

大島青松園  塔 和子さん(19)


金魚

与えられた金魚鉢の中で

与えられた餌をもらって

生きるための知恵も労働も

運命を切りひらくために必要なものは

すべて放棄した

牙も毒も持たずにいられるこのさびしさ


器の中のなまぬるい水につかってから

あまりにながいので


幸せがなになのか

自由がなになのか

健康がなになのか

もう麻痺してしまってわからない


ふと

口ばしを鉢にぶつけて

生きていたと

鮮烈に五体をはしるものを知る

金魚はときおり

開けられた窓の向こうの空を見ながら

かすかな声が自分を呼ぶのを

きいたような気がして

ひくひくと

身をふるわせる












あなたは盛りの美にまよい

あれか

これかと

もたされた選ぶ自由の重たさと

選ぶことの恐ろしさにたじろぎながら

一本を選ぶ

私を選んでくれたあなたよ

あなたは私にどんな美を見つけて選んだのか

その美が

いつまで保たれると思って見たか

選ぶあなたは最も美しい私を選び

私は美の中に

終りのみにくさを抱き合わせて売りつける

私を抱きかかえているあなたよ

あなたの腕の中で

一瞬

一瞬

おとろえている私を

どのようにして

とどめることができるのか

かがやく花は

しのび寄ってくる暗い眠りを

おしころして

かすかにふるえている




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大島青松園  塔 和子さん(18)




人が死んだら

なぜと問うのに

生きていることを

なぜ生きているのかと問わないのだろう

人が泣いたら

なぜと問うのに

笑ったら

なぜ笑ったことを問わないのだろう

生よりも不幸な死はあるか

死よりも不幸な生はあるか

泣くよりもつらい

笑いはないか

そんな笑いよりも楽な涙はないか

人が問うのは

平均的なことがらを越え得ない

人が見過ごすのは

見なれた風景にあてはまるとき

裏返しになった一枚の画は

いつまでも

裏返しになったまま

誰も気付かずに通り過ぎる

そして

人はいつも

傍らに

気付かずに通り過ぎた

何枚かの画をもっていて

埋葬をすませた後などに

ふっと

気付いて

取り出して見たりする










生鮮食料品


剽軽な蛙から蛇

獰猛な鰐

執念のとかげまで

首を切られ

贓物を抜かれ

くるりと皮をはがれた姿のまま

なおその肉をくねらせながら

生鮮食料品として竿につり下げられている

熱帯の街の露店


時が停止したように

皮をはがれつづける爬虫類の

原始の世界への異様な昂奮の中で

あの沼の思い出のつまった目も

密林の焼けつく陽も

彼等の中の遠い王国

それは

首のない爬虫類にはもうない

吊り下げられた

何本かの

白い肉の間から

買物籠を下げた

女のブラウスが

あざやかな原色を

ちらつかせているだけだ





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大島青松園  赤沢正美さん(15)




ありの儘の声にて無雑作に語りあふこの不思議さは君より来たる




冬木木の眠りをさまし夜をひと夜降りたる雨に庭土匂ふ




満潮のいづれの波か春めきし母音をもてる波まじりをり




建ち並ぶ団地の下にたんぽぽの野と少年の日は眠りをり




照ればすぐ雨乞いの火を燃やしたる村失せて団地に人ら犇く




赫赫と夜の山上に雨乞いの火を焚きし百姓父らは絶えぬ




せかされてゐると思ふな夕風にすすきの音はいまだ艶もつ




赤沢正美さんの略歴
昭和8年香川県生まれ。昭和14年大島青松園に入園。昭和16年「龍」に入会、一時中断の後、昭和25年「創作」により長谷川銀作に師事。昭和46年10月失明。昭和47年8月「長流」創立に参加。昭和53年1月52年度「長流」年度賞受賞。妻は詩人の塔和子。『稜線』(昭和27年)『澪』(昭和29年)『陸の中の島』(1956年)『三つの門』(昭和45年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)『投影』(昭和49年)『草に立つ風』(昭和62年)。



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大島青松園  塔 和子さん(17)


水仙


ゆらりと咲いた水仙

切るとじくから花へ

真直ぐにゆきわたっていた水が

切られたところで勢いあまって

したたる

水は花になったり

野菜になったり

果実になったり

さまざまな姿をもって

現れる

しかしこの奥深い水の変身

こまやかな芸の

神秘に思いをめぐらせて

見るものがあろうか

切った水仙を

花瓶の水に移すと

水仙は

その成り立ちの水を

音を立てるように吸い上げ

清楚な香りを波ように

ゆっくりと広がらせて

活けた私をたじろがせる










柿のたね



この楕円形の小さな一粒の柿の種の内側は

芽吹くときを見つめて這いのぼっている

終わった果実から渡されたバトンを

芽吹く二枚の葉に渡すまで

自らの姿を内深く秘めて

命の根元からきこえる

いぶきのような力強い声をききながら

未来へ向かう意志を強くして

土を恋う

つづく一筋の命の証人

芽吹く命のための

一粒のこの種は

さいげんもなくつづけている

リレーの途中を

熱い命に息づきながら

  土に芽生えることができるか

  焼却炉に消えるか

  人の手に運命をにぎられて

  いま食べ散らされた

  テーブルの上で光っている



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大島青松園  赤沢正美さん(14)



を上げて歌を作れと叫ぶごと言ひきし君の便りを拝す




眼科にて見たる義眼が光りつつ
ひしめきて夜の脳髄ほてる




裏返しにされて虚空を掻く亀が何も見えなくなりし眼に棲む




選びたるものにあらねど盲ひたるわれに盲の春めぐり来ぬ




野晒のざらしの骨ことごとく起ち上れ青葉の闇はきみ達のもの




窓際を離れずに鳴く蟋蟀に思ひ浮かばぬひとりを捜す




床下の入口近きところより遠くはゆかず仔猫あそべり




床下を出でて気儘に歩く仔を呼ぶ親猫の今朝はきびしき




満開になりしと思ふ藤棚の花に降る雨今朝あらあらし




見えぬわれを双手にしかと握りしめ揺さぶりにつつ声かけ給ひぬ





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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在65才、農業歴29年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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