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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

邑久光明園  上丸春生子さん



晩秋


島の小高い丘に

およそ千の墓標は

日毎の汐騒をきき

落葉とささやきながら

渡りゆく鳥の群に

自らの心を託していた


ある日

島を訪れた旅人は

こんなことを云った

お前等はしあわせだ

風光明媚な所に立っている

お前等はのん気だ

働かないでもいいから




だが

その旅人は

ほんのちょっぴり

涙を流したほか

代りに立ってもよい

とは言わなかった

墓標は沈黙をつづけていた


墓標は沈みゆく

夕日の果をみつめていたからだ




上丸春生子(上丸たけを)(上丸武夫)さんの略歴
1912年3月17日富山県に生まれる。1940年7月9日、光明園に入所。詩作会会員としてよりも、卯の花俳句会会員としての活動が長い。俳句は戦後に始め、「ホトトギス」「玉藻」などの結社に所属。自治会役員も長期務めた。1983年3月18日死去。

俳句は2つしか掲載されていなかった。

故郷に兄の子として吾子卒業

墓守りも病者の作業落葉掃く




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邑久光明園  上丸春生子さん



黄昏


綿屑の様な雲は

あかねにもえて

墨を流した様な

煙突の煙は

だんだん薄くなりながら

西から東へ流れていく


電線に止っていた雀は

泥礫の様に見えながら

とんでいった


屋根のひさし

豆の手との間に

蜘蛛はさかさになって

囲を踏んまえている


しわのかたまりのような海面へ

太陽がめり込んでいった


くらがりのかけらが

とんでいる

蝙蝠コウモリ



だんだん濃くなっていく

やみに包まれた私の

瞼にはっきりと

故郷の山川は生れた













白バラの群のような雲は

見ているうちに

崩ずれてゆく

煙突の煙は

西から東へ

ゆるやかに流れてゆく

からすが一羽

煙突の煙の反対の方へとんでゆく

蕾のふくらんだ桜に

雀が二三羽止っている

窓は私の詩集である


あかい星がかがやいている

青い星がきらめいている

大きな星の隣に

小さな星がまたたいている

雨の降る穴だろうか

星は皆濡れている様に見える

山の端にあった円い月が

何時の間にか

黄(金)を失って

松の梢にかかっている

窓は私の詩集である




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邑久光明園  上丸春生子さん




めぐり会えるこの日のいのち

かつての冬の曠野

時雨の枯路も消え去り

なごやかな陽光を

たたえて木々は芽ぐみ

呪われた病いも

新らしい薬によって

癒える夢を育て

活き活きとして

希望に満つ

生きていることの嬉しさを

真実悟らしめる春よ


更に

世のすべての病めるものに

あまねく新らしい光と

こよなき倖のあらんことを

私は願う









五本の線


煤によごれて

赤黒く染った

時計のかかっている柱に

横にひかれた五本の線


それは親しい友と

背丈を計って記した

なつかしい

思い出の線である

一番上の線はMさん

次の線はOさん

三番目の線は私

四番目はKさん

下の線はTさんだ


Mさんより教えられたもの

其れは苦しみのどん底に求めた

真理こそ

最大の幸福であると


Oさんから貰ったもの

それはどんな大きな怒でも

じっと耐えて一時間後に

爆発させても遅くないと


Kさんに学んだもの

それはどんな人にでも

同じ様に

尊敬を払うことだと


Tさんが諭してくれたもの

それは古い諺だ

何時までも

あると思うな親と金


だが私は

どの一つも身につけることが

いまだに出来ない



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邑久光明園  上丸春生子さん




あれもこれも離れていき

これもあれも離れていく

ペンは手をはなれて

机の上に位置をかえ

手とペンは無限のへだたりを生じる

右手と左手のあいだに

秋の野は横たわり

よそおいた木の葉は力なく

樹の枝を見放す

記憶は雲の浮遊と共に移り去り

凡てのものが

風景の中に離散した













二ひきの黒揚羽が

くつぬぎ石に止っている

風雨にうたれたのだろう

はねが破れている

だが

とびたつ心は押えきれない

みどりの草原を夢見る心も


黒い蝶の黒い羽ばたき

黒い翳を落して

一瞬蝶は

一足の靴になった



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邑久光明園  上丸春生子さん


7月1日に更新
した上丸春生子さんの続きです。



訴え


弟よ

友よ

腹の足しにもならないものを

書きつづけているからと

責めないでくれ

病に呆けて

やっと細く息をしている私は

書くことによって

切つない純粋がみつかるのだ

自我とか 思索とか

それだって私には虹なのだ

近頃の私は

洗面器の水のように

冷めたく さびしく

疲れている

それでいて

かりそめの情さえも

炎天の木かげのように

やさしく

心に沁みてくるのだ












花に想う


壮麗な牡丹は崩れて

いつの間にか卯の花は朽ち

紫陽花のまりは雨だれに打たれ

静かに少しのやすむひまもなく

花の季節は移っていく

漂泊された日々にでも耐ゆる愛と美は

大きな土壌のふところに抱かれて

生命の尊厳さをほこっている


雑草の中よりのび上がって

花は

懸命に自己の存在を訴えている

そのようないとなみの中に

生きていく俺たちの慕情があるのだ

一冊の書籍による人生の探求は

静かなる思索のひかり

一枚のレコードよりおこる即興幻想曲は

願いのひとときの音律


花粉が流れていく流れていく

永遠の孤独を求めて

自ずからの骸の上を

美しいものへの郷愁は

くめども尽きざる生命の泉

めぐり来る季節への羽搏き

花は花の為に生き

俺たちは俺たちの日々を生きていく



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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在65才、農業歴29年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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