画
人が死んだら
なぜと問うのに
生きていることを
なぜ生きているのかと問わないのだろう
人が泣いたら
なぜと問うのに
笑ったら
なぜ笑ったことを問わないのだろう
生よりも不幸な死はあるか
死よりも不幸な生はあるか
泣くよりもつらい
笑いはないか
そんな笑いよりも楽な涙はないか
人が問うのは
平均的なことがらを越え得ない
人が見過ごすのは
見なれた風景にあてはまるとき
裏返しになった一枚の画は
いつまでも
裏返しになったまま
誰も気付かずに通り過ぎる
そして
人はいつも
傍らに
気付かずに通り過ぎた
何枚かの画をもっていて
埋葬をすませた後などに
ふっと
気付いて
取り出して見たりする
生鮮食料品
剽軽な蛙から蛇
獰猛な鰐
執念のとかげまで
首を切られ
贓物を抜かれ
くるりと皮をはがれた姿のまま
なおその肉をくねらせながら
生鮮食料品として竿につり下げられている
熱帯の街の露店
時が停止したように
皮をはがれつづける爬虫類の
原始の世界への異様な昂奮の中で
あの沼の思い出のつまった目も
密林の焼けつく陽も
彼等の中の遠い王国
それは
首のない爬虫類にはもうない
吊り下げられた
何本かの
白い肉の間から
買物籠を下げた
女のブラウスが
あざやかな原色を
ちらつかせているだけだ
獰猛な鰐
執念のとかげまで
首を切られ
贓物を抜かれ
くるりと皮をはがれた姿のまま
なおその肉をくねらせながら
生鮮食料品として竿につり下げられている
熱帯の街の露店
時が停止したように
皮をはがれつづける爬虫類の
原始の世界への異様な昂奮の中で
あの沼の思い出のつまった目も
密林の焼けつく陽も
彼等の中の遠い王国
それは
首のない爬虫類にはもうない
吊り下げられた
何本かの
白い肉の間から
買物籠を下げた
女のブラウスが
あざやかな原色を
ちらつかせているだけだ