朝日新聞 3月5日 29面
西山さん 国賠訴訟初弁論
滋賀県の湖東記念病院で2003年、死亡した男性患者への殺人罪で服役後、再審無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(41)が国と県に約4300万円の国家賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が4日、大津地裁であった。
西山さんは「長く苦しまなければならなかったのは何が問題だったのか、明らかにしたい」と陳述。国と県は請求棄却を求めた。
朝日新聞 2020年 4月16日 私の視点 成城大学教授 指宿 信
大津・再審無罪を機に 裁判誤ったら独立調査を
3月末、大津地裁は殺人罪で服役後に再審請求が認められた看護助手の女性に無罪を言い渡した。
事故だった可能性が高いとして殺人容疑そのものを否定したのである。
注目されたのは、裁判長が判決後に述べた異例の説諭である。捜査に当たった警察、起訴した検察、有罪を言い渡した裁判所、そして弁護士まで含めた関係者に改革を訴えたのだ。
平成の時代には2度にわたって刑事司法改革が行われた。まず、裁判への市民参加や被疑者国選弁護の拡大、証拠開示制度などが導入された。
検察不祥事を受けた2度目の改革では、証拠リストの交付や裁判員裁判対象事件の取り調べの録音録画義務付けなどが実現した。
しかし、今回の再審無罪判決は、これらの改革で実現せず、無視されてきた重要な改革を浮き彫りにした。これを機に、改革すべき喫緊の課題を挙げておきたい。
第一は、取り調べへの弁護人立ち合いである。今回の事件では被疑者が否認の意思を弁護人に伝えると、それを覆そうとする取り調べの実態が明らかになった。弁護人が立ち会えばそうしたことはできなくなる。
第二は、録音録画の全ての事件への拡大と、任意取り調べでの実施である。30年以上前に取り調べの録音を始めた英国では、2013年から任意取り調べも録音録画している。
第三は、関連する全証拠の検察官への送付義務と、被告側への全面事前開示である。
今回の事件でも患者の死亡理由に関する捜査報告書が公判前に送検、開示されていれば事故死と判断されていたかもしれない。
第四は、再審請求審での証拠開示手続きの整備だ。同報告書が早期に開示されていれば女性は服役中に再審無罪を手にできたかもしれない。
第五は、死因究明制度の確立である。事故死を事件に仕立てた捜査の誤りは、近年再審無罪となった大阪の女児保険金目的殺害事件でも明らかになっている。独立した死因究明機関の確立が急務だ。
今回の事件とは直接関係はないが、自白しない被疑者・被告人が長期間にわたって勾留される「人質司法」を改めるための法改正も、これを機に実現すべきだ。
重要なのは、これらはすでに海外では実現している内容ばかりであることだ。それだけにこれまでの改革の姿勢に疑問が湧いてくる。
残念なことに、わが国には誤った裁判の原因を究明し対策を立てるための仕組みがそもそも存在しない。
各国にはこうした使命を果たすための独立調査委員会などが置かれてきた。わが国でも一刻も早い設置が望まれる。
それが今回の無罪判決の投げかけた問題に答えるための第一歩となる。
素人が読んでもわかりやすい内容だった。
「日本の常識は世界の非常識」が、警察・検察でも見受けられる。
韓国と違って、日本の司法は政権から独立していないのでは。
指宿教授が指摘されている問題点は、いつになったら改善されるのか。
当分の間、期待できないと思う。